メンタルリープの根拠4:ぐずりの果たす機能

メンタルリープの根拠となる最後の問いは、退行期という事象の果たす機能です。

ぐずり期や退行現象にはある機能が存在する

たとえば、アフリカのマサイ族のぐずりやすい子とそうではない子における飢饉時の生存率の研究では、ぐずりやすい子の方が生存率が高いことがわかりました(Marten de Vries氏)。また同研究対象者の間では、ぐずりやすい子の方が母親のお世話を呼び込むのが上手でした。

Maziade氏等は、1つの大規模な出生コホートから抽出した3種類の気質の標本を対象に、4ヶ月と8ヶ月の時点で査定された子どもの気質と、その子たちが4.7歳の時点で算定されたIQの間の関係性を調査しました。そのデータにより、社会経済的に中流階級および上流階級に分類される人々において、またコミュニケーション力の高い家庭において、非常にぐずりやすいという特性はIQの発達に強いプラスの影響を及ぼすことがわかりました。ぐずりやすい子のグループの方が、意外にも、IQが高くなることが示されたのです。また、主に社会経済的ステータスのIQの発達に対する効果がよく再現されていたのも、ぐずりやすい子のグループでした。これらのデータは、ぐずりやすい乳幼児は家族からのお世話を誘発しやすく、それが長年にわたり積み重なることで、知的な発達が促されるという仮説を支持しています。

F.プローイユ博士とH.ヴァン・デ・リート博士も、退行期の機能に関する実験を行っています。まず二人は、赤ちゃんを虐待する恐れのあるシングルマザーを集めたリスクグループ向けの「リープのハードル」と呼ばれる育児サポート教育プログラムを開発しました。このプログラムの主な内容は、親たちが赤ちゃんのぐずり期に気づけるようにすること、その時期に赤ちゃんがぐずりやすくなるのはしょうがないことや、ぐずり期に入った赤ちゃんはどうなだめればよいのかを理解してもらうこと、そして新たに芽生えた知覚の習熟やそれに伴う学習を促す方法を教えることでした。

そして二人は「リープのハードル」プログラムを受けた実験群のデータと、他のプログラムで得られた統制群のデータを比較したのです。

リープのハードルの効果

親御さんへの「リープのハードル」プログラムの効果は次の通りです。

  • 赤ちゃんの気性が激しくなったときの対応が、それまでは親自身のしつけのルールや我慢するラインに基づいて行われていましたが、子どもの行動パターンに基づいて行われるように変わりました。
  • 赤ちゃんの発達に対する評価が、運動的発達よりも、知的発達に関する情報に基づいて行われるようになりました。
  • 最終的に、自分や他人を責めることが少なくなりました。

赤ちゃんへの「リープのハードル」プログラムの影響は次の通りです。

  • 第一に、Bayley乳幼児発達検査の心的尺度の得点が大幅に上がりました。
  • 第二に、同検査において女の子の得点が低くなる傾向が起こらなかったという意味で、男女の差がなくなりました。
  • 第三に、同プログラムに参加した子供たちの方が、見慣れない人に対して、統制群の子どもたちよりも、恐れたり拒絶したりせず、オープンで許容的でした。
  • アタッチメントのタイプに違いは出ませんでした。
  • 同プログラムは、乳幼児の健康にも良い効果が見られました。この傾向は、特に女の子に顕著に見られました。

つまり明らかに退行期には、家族のお世話を誘発し、それによって知能や社会性の発達が促され、さらには身体的健康が促進される機能があるわけです。そして最後の機能は、明らかに生存率を上げています。また前の2つの機能も、それに間接的に寄与している可能性があります。 



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